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あんじゅうこん

安重根

谷 譲次

――十四の場面――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,548 字 · 100 页

青空文庫

僕らが取り次ぐと言ったら、ともかくその用というのを話したらいいじゃないか。

張首明 (朴鳳錫へせせら笑って)おれの身体にさわると、大変なことになるのを知らねえか。おれは、ただの床屋の張さんじゃあねえぞ。

朴鳳錫 (鄭吉炳を押し退けようとしながら)なにを! 貴様、日本のスパイだと言いたいんだろう。同じ朝鮮人のくせに、日本人から女房と金を貰って、金斗星先生や安――。

鄭吉炳 朴君!

朴鳳錫 金斗星先生の独立運動をスパイしてやがる。こっちだって、そんなことはちゃんと知ってるんだ。てめえのような裏切者は――(鄭吉炳へ)放せ。放せよ。畜生! 張の野郎を殴り殺してやるんだ。

と鄭吉炳を振り払って掴みかかろうとする時、階段の上に薄い灯りがさして李剛の声がする。

李剛の声 (静かに)張さんですか。

張首明 (階段の上を覗いて)おや、先生。李先生ですね。へへへ、どうも、真っ暗で――。

李剛の声 張さんですね。

張首明 ちょっとお話ししたいことがあるんですが――。

李剛の声 何です。

朴鳳錫 (開け放しのドアを指して、張首明へ)二階へ上るなら、戸を閉めて来い。

張首明 いえ、こちらで結構ですよ。