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たいわ

対話

宮本 百合子

「週刊朝日」1924(大正13)年1月1日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,561 字 · 18 页

青空文庫

際立った音と目立つ象を持たないからこの神々の容赦ない視線も逃れ、場合によると、活気を添える味方とさえ思われる。それに、破壊神呪咀の神は、自分の正面に来るものしか見えないのが特性です。三方は明いている。そこが私の領分です。どんな破滅が激しかろうと、虐げようが厳しかろうと、男女一組の真直な人間がその三方の何処かに逃る隙さえあれば、きっと私の手が待ち受けてい、つつましく根気よく次代の栄をもり立てるのです。

――おや、微な気勢が近づいて来る。私になじみのあるものらしい――。

イオイナの使者、一片の花弁のように軽く、女神の傍に降る。

使者 およろこび下さい。女神様。そろそろ貴女のお力の効験が現れて来ました。災厄が余り突然やって来たので、人間の微妙な精神の歯車も大分痛められました。あれほど感情の鋭い者達が、本当に涙もこぼさず、獣のように狂い喚いていた有様は思い出しても恐ろしいが。――(一粒のキラキラ金剛石のように輝く露を示す。)御覧下さいこれは、始めて人間がしんからこぼした嬉し涙の一雫です。互に求め合い、思い合っていた血縁、愛人達、誼の深い友達共が、はっと息災な眼を見合わせた刹那、思わずおとした一滴です。