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しょうもんだいだいもんだい

小問題大問題

佐々木 邦

「現代」大日本雄辯會講談社、1927(昭和2)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,957 字 · 23 页

青空文庫

旧知己も閥外のものを引き立てる余地がなく身分が違えば此方も自然遠退いた。それで破格の抜擢もなく、漸く高等官の下っ端まで漕ぎつけたら、もう老朽になってしまった。思い出すと忌々しい。その怨念が息子に伝わり、孫の津島君に乗り移って、今だに晩酌の都度祟りをするのである。

「寿一や、人間の一生には一度や二度必ず大問題が起って来る。その時巧く身を処せばドン/\出世する。やり損ねたが最後、もうナカ/\芽を吹かない」

と老人はその折シミ/″\感想を洩らした。

「真正に然うですね」

と津島君は真白な髯を見詰めたことを忘れない。

「一生の浮沈が定る。恐ろしいものだ。俺は大問題と小問題を取り違えてしまった。廃藩になれば、国許へ帰ることなぞは小問題だ。県令になって国に仕え家を興すのが大問題だった。考えて見ると俺は残念でならない」

「僕も残念です。子爵は豪いものですね。学校にも子爵の子がいますが、毎日馬に乗って来ますよ」

「子爵になると豪く見えるのさ。人間に差異はない。運だよ。あんな詰まらないことで、百何十里のところを呼び戻した重役共も重役共だが、一刻を争う時に、おいそれと言って帰って行った俺も俺さ。