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しょうじょじごく
少女地獄
夢野 久作
「少女地獄」黒白書房、1936(昭和11)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 105,174 字 · 206 页
実際、三、四日前の廃屋の中の出来事よりも、この時に父から聞きました大阪行きのお話の方が、ガア――ンと私をタタキ潰したのでした。
私はこの時ほど、私の気持を裏切られた事はありませんでした。校長先生が私を大阪へ遣ろうとしておられる……と言う事が、私を絶望的に悲しませたのです。
「……考えさして下さい」
と返事をするうちに私はもう涙で胸が一パイになってしまいました。何故だかわからないままシクシクとシャクリ上げ始めました。
それを見ました父はまた、椅子の上から一膝進めて申しました。
「これぐらい、有難い事はないじゃないか……大学を卒業した男の学士様でさえ三十円、二十円の口がない世の中だよ。考える事なんかないじゃないか……それとも何かい。お前には、どうしても大阪へ行けない理由でも在るのかい」
私は後にも前にも、あんなに厳粛な父の声を聞いた事は一度もないのでした。ですから思わず顔を上げて両親の顔を見まわしますと、両親は父の言葉付以上に、大罪人でも訊問しているかのように厳粛な、剛わばった顔をして、白々と私を凝視しておりましたので、私はいよいよビックリしてしまいました。