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しょうじょじごく

少女地獄

夢野 久作

「少女地獄」黒白書房、1936(昭和11)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 105,174 字 · 206 页

青空文庫

何でも郷里の人に両親から言伝た品物だとかで、例によって私が帰宅後に、病院に居残っていた彼女が受け取ったという話であったが、彼女が汗を流して提げて来た酒瓶と樽にはレッテルも何もなく、きわめて粗末な、田舎臭い熨斗紙が一枚ずつ貼り付けて在る切りであった。一口味わってみた私は、

「ウン。ナカナカ江戸前だな。ピインと来るね。奈良漬も三越のに負けない」

と思わず口を辷らしたが、恐らくそれが図星だったのであろう。樽の縄を始末していた彼女は、ただ赤面した切りでコソコソと病院に逃げ帰ったようであった。

もっともその時に私は彼女の幸福を祈っている兄や両親の事を思い出して、相当御念入りにシンミリさせられていたから、彼女のそうしたコソコソした態度にはチットモ気付かなかった。彼女のアトを見送りながら、

「タッタ二十円しか遣らないのになあ」

とテレ隠しみたような冗談を言ったくらいの事であった。

ところでここまでは誠に上出来であった。この辺で止めて置けば万事が天衣無縫で、彼女の正体も暴露されず、私の病院も依然としてマスコットを失わずにすんだ訳であったが、好事魔多し、とでも言おうか。