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あきかぜとはは

尾崎士郎短篇集

尾崎 士郎

尾崎士郎『尾崎士郎短篇集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:秋風と母、運命について、河鹿、菎蒻、三等郵便局、十三夜、鶺鴒の巣、滝について、叛骨・中野正剛、蜜柑の皮。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 108,032 字 · 216 页

青空文庫

わたしは胸の底に何かぎごちないぐりぐりが出来たような気がした。そして、その女の存在が今にも家中にひろがってゆくような気持を避けることが出来なかった。すると老衰した母の姿が始めて異常な寂しさをもってわたしの心に迫ってきた。

兄はわたしの帰省を望んでいなかった。それをわたしは彼の手紙の中に感じた。何故なら、彼は彼の結婚について一言も書いていなかったばかりでなく、「冬の休暇は短いから無理に帰る必要もあるまい」という最後に書かれた言葉が、わたしを避けている彼の心を明かに暗示していたから。

しかし、わたしは自分の心の中に一つの要求を感じないではいられなかった。わたしたちの間に生じかかっている新しい関係の中においてのわたし自身の立場を明かにしなければならないという気持が強くわたしの心を支配したのだ。それに兄が避けている気持の中へ進んで入ってゆくことが、長い間わたしの胸の中に鬱結していた彼に対する反抗を明るみの中に証拠立てるような気がしたのだ。

町は半歳経たないうちに見違えるほど変っていた。その年の夏、漸く工事が始まったばかりの軽便鉄道が平原を遮断してN町から続いていた。