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あきかぜとはは
尾崎士郎短篇集
尾崎 士郎
尾崎士郎『尾崎士郎短篇集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:秋風と母、運命について、河鹿、菎蒻、三等郵便局、十三夜、鶺鴒の巣、滝について、叛骨・中野正剛、蜜柑の皮。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 108,032 字 · 216 页
弟の結婚の招宴で
いかに、行きあたりばったりの貧乏世帯を持つことから出発するとはいえ、私たちの平素考えているような竹の柱に茅の屋根というわけにはゆくまい。空想と現実とのからみあった問題であり、批判の対象となるべきものは、万里の波濤を越えてやってきた花嫁花婿ではなくて、今や時代の脚光を浴びながら、新時代の指導的政治家として片脚で立っている中野正剛なのである。
弟の結婚の招宴で
中野正剛は最初、弟の結婚問題、――というよりも今まで類例のない国際自由結婚に対して、まったく無関心の態度をとっているように見えた。幼少時代から東洋的な教育と生活の習慣を身につけている彼は、弟の結婚に対しても習慣と形式を重んじて、豪華は豪華なりに、簡素は簡素なりに、首尾一貫した方法を選ぶべきが至当であると考えたらしい。
何しろ、当時の秀人の周囲といえば貧乏な芸術家たちばかりである。私は最初、二人を迎えて、ささやかな宴を開こうと思ったが、いよいよとなると、全財産をあつめて十何円しかなかった。それも、女房の着物と、自分の時計を入質して、やっと調達した金である。これでは招宴どころのさわぎではない。私は、フェリシタ夫人(スペイン女性の名)と秀人をその日、夕食をすましてから歌舞伎の観劇に招く予定にしていた。