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あきかぜとはは
尾崎士郎短篇集
尾崎 士郎
尾崎士郎『尾崎士郎短篇集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:秋風と母、運命について、河鹿、菎蒻、三等郵便局、十三夜、鶺鴒の巣、滝について、叛骨・中野正剛、蜜柑の皮。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 108,032 字 · 216 页
三
わたしは烈しい銃声をきいたのだ。しかし、そのとき父の居間から和かな母の笑い声が聞えたのでわたしの神経はやっと鎮まった。父の居間へ入ってゆくと、母が一人だけ眠そうな顔をして坐っていた。其処へ父が中庭の方の縁側から荒々しい足音を立てて帰ってきた。彼は右手にピストルをぶら下げていたがわたしの方を見てにやりと笑った。
「何か手応えがあったように思うがな」
彼は呟くように言った。ピストルの銃口からは煙が出ていた。それは旧式の六連発銃であった。ある請負仕事のために台湾へ行っていた大工が四、五年前帰ってきたときそれを土産にくれたのであった。そのピストルは大きな皮袋に収められて長い間父の室の用箪笥の抽出に入れてあったのだ。
「だんだん馴れてきたぜ。――これで四へんだからな」
と父は言った。そしてピストルの環をはずして黒くなった銃口を白い布で拭きはじめた。
「はじめはびっくりしたがの、このごろでは何とも無いようになった」
と母が言った。翌朝、庭へ出てみると納屋の前の植木棚の下に一匹の子猫が死んでいた。
三
午後の田舎道をわたしは父とならんで歩いた。父は着物の上にマントを羽織り、靴を穿いていた。