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あきかぜとはは
尾崎士郎短篇集
尾崎 士郎
尾崎士郎『尾崎士郎短篇集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:秋風と母、運命について、河鹿、菎蒻、三等郵便局、十三夜、鶺鴒の巣、滝について、叛骨・中野正剛、蜜柑の皮。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 108,032 字 · 216 页
六
そして、一つ一つ番号のついた目録の下にはそれぞれの品に対して兄の想像した価格が書き加えられてあった。しかし、わたしの心はこの手紙のために少しも動かされなかった。否むしろそれはわたしの空想の中に描かれた兄の姿を一層みすぼらしく滑稽なものにしてしまったのだ。というのは、その頃わたしは極度に唯物的な考え方に囚われていたので死に対する彼の宿命観をすらも、絶えず自分の境遇を何かしら素晴らしく悲痛なものに誇張しようとする彼の病的な感傷癖の変形だと解釈しなければ居られなかったのだから。
わたしは兄に宛てて返事を書いた。彼の手紙がわたしを驚かしたこと、それを自分は彼の病気のせいだと解釈していること、若し仮りに兄が唐突に病死することがあるとしても家を売らなければならないような事情が生じてくるということは絶対に想像することもできないこと、一日も早く兄の健康の恢復するのを自分が望んでいること。――
その簡単な文言の中にわたしは兄に対する軽侮の情をかくすことが出来なかった。しかし、それきり兄からは何の返事も来なかった。
六
一ト月経った。わたしはある海岸に肺病を養っている友人を訪ね、二、三日泊って帰ってくると机の上に一通の電報が置いてあった。