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あきかぜとはは

尾崎士郎短篇集

尾崎 士郎

尾崎士郎『尾崎士郎短篇集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:秋風と母、運命について、河鹿、菎蒻、三等郵便局、十三夜、鶺鴒の巣、滝について、叛骨・中野正剛、蜜柑の皮。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 108,032 字 · 216 页

青空文庫

夜、十時になって、階下の事務室で戦況ニュースについて話しあっていると、妊婦に附き添っていた日本人小学校の女教師をしていたという若い女が、おそるおそる階段をおりてきて、無事に女の子の産れたことを報告した。夜どおし、ひどい雨である。雨の中を遠くから砲声が聞えてくる。暗闇で、同室四人、椅子にもたれて眠ろうとしたが、蚊が出てきて眠られないので、蚊遣り線香をつけ、内地の生活の思い出を話しあった。窓の外が白みかかってきた頃、相川と古見がどっと笑いだす声に、うとうととしかけたところを起され、

「何だ?」

といって訊くと、今日の誕生祝いの話だという。私が眠っているあいだにフィリピンの監視兵がやってきて、立話をしているあいだに、女の子の産れた話をすると、そいつはいい、ひとつ、みんないっしょになって誕生祝いをやろうじゃないかといいだしたそうである。

「やっぱり、フィリピン人には気楽なところがあっていいよ、――そんなら、豚を二、三頭買い出しにいってもらえないかというと、よろしいといってすぐ引きうけた、今夜は久しぶりで御馳走にありつけるぜ」

相川は例の調子でうまく監視兵に話したらしい。