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あきかぜとはは
尾崎士郎短篇集
尾崎 士郎
尾崎士郎『尾崎士郎短篇集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:秋風と母、運命について、河鹿、菎蒻、三等郵便局、十三夜、鶺鴒の巣、滝について、叛骨・中野正剛、蜜柑の皮。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 108,032 字 · 216 页
そのあとで、係員が屋内と屋外のテントを廻って、日が暮れたら煙草を喫ってはならぬという命令を伝えて歩いた。もう庭にいるものは一人もいない。六時になるとひっそりとして、かすかな物音も聞えなくなってしまう。
「おい、タイピストたちはどうしたろうかな」
と、相川の耳に囁くと、
「いや、おれも今、気になっていたところだ、――今までに来ないところをみると、何か異状があったかも知れぬな」
暗い夜空には星かげ一つ見ることができなかった。夜中に、二階の赤ん坊が泣きだした。引きつるような泣き声でみんな眼をさましてしまったらしい。泣き声は刺すようにするどく、なかなか止みそうではない。弱りぬいた看護の女が泣く子を抱いて階段をおりてきた。真っ暗な廊下を、足音を忍びしのび、往ったり来たりしている。
各班から希望者を募って収容所内の掃除をはじめることになったが、希望者が多すぎるので二十人だけ抽籤できめることになった。塀の外を小型バスが二、三台砂埃りを立てて走ってゆくのが見える。その音を聴いているうちに外気が急になつかしくなってきた。収容所にこもって今日で十日目である。正午すぎアメリカ陸軍部隊からマックという少佐がやってきた。