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あきかぜとはは

尾崎士郎短篇集

尾崎 士郎

尾崎士郎『尾崎士郎短篇集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:秋風と母、運命について、河鹿、菎蒻、三等郵便局、十三夜、鶺鴒の巣、滝について、叛骨・中野正剛、蜜柑の皮。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 108,032 字 · 216 页

青空文庫

私が早稲田の学生時代に、永井はすでに教授であったが、中野は大先輩とはいえ、やっと東京日日新聞(現在の毎日新聞)に入社したばかりのときだった。

私の頭の中では、現在もそうであるが、その頃から、時代的に対立する二つの花やかな人間像としてうかんでくる。

永井は、明治四十一年、オックスフォード大学留学中(二十八歳)に片足を切断したが、中野もまた大正十五年、左足の整形手術を誤って隻脚となった。学生時代の中野の声名が、私たちの予科生(現在の高等学校)時代においても、全校を圧倒していたのは、彼の人間内容や、識見抱負よりも、むしろ柔道の選手としてであった。あの頃、日本の柔道界に不世出の存在として知られ、しばしば暴力沙汰を起して儕輩のあいだに畏怖と敬遠の的にされていた徳三宝との試合に勝ったということが、中野に対する人気を湧き立たせたのは当然であろう。

学生時代の私は、もちろん、この肩で風を切って学生街を闊歩する大先輩と親しく話し合う機会なぞのあるべき筈もなかったが、いつも洗いざらしの紺絣の着物に、小倉の袴を裾短かにはき、心持ち左肩をそびやかすようにして歩いてくる中野正剛の姿を仰ぎ見るような思いで眺めたものである。