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あきかぜとはは

尾崎士郎短篇集

尾崎 士郎

尾崎士郎『尾崎士郎短篇集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:秋風と母、運命について、河鹿、菎蒻、三等郵便局、十三夜、鶺鴒の巣、滝について、叛骨・中野正剛、蜜柑の皮。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 108,032 字 · 216 页

青空文庫

)。

この家のサロンで、中野正剛の主催による、近親者たちの顔つなぎの小宴が催された。

フェリシタ夫人は料理が得意なので、自分で台所を仕切って、世話女房らしい、かいがいしさを遺憾なく発揮していたようである。

あつまった人の数は二十人足らずで、中野家に関係のある人たち、三宅雪嶺、花圃女史、正剛夫人、その他の親戚を除いては、大西斎、高村光太郎夫妻、それに私夫妻くらいのものではなかったろうか。

私は、そのときの、中野正剛の、愛情にあふれた挨拶を、いまだに忘れることが出来ない。

「秀人が帰ってきました。彼も長いあいだ、いろいろな苦しみや悩みをかさねて来たと思いますが、これからは日本に落ちついて、自分にふさわしい態度を崩さず、自分の道を切りひらいてゆくと思います。どうか、この、ふつつかな弟のために諸兄の叱※(「口+它」、第3水準1-14-88)と激励を心からお願い申上げます」

こんな、へたくそな挨拶ではないが、いかにも中野らしい豪快な調子のこもった、和やかで、すっきりとした無駄のない挨拶だった。

唯、私が意外にかんじたことは、彼の言葉の中に、一言半句も、フェリシタ夫人についての意見や、今後の生活設計に対する希望の出て来ないことだった。