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あきかぜとはは
尾崎士郎短篇集
尾崎 士郎
尾崎士郎『尾崎士郎短篇集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:秋風と母、運命について、河鹿、菎蒻、三等郵便局、十三夜、鶺鴒の巣、滝について、叛骨・中野正剛、蜜柑の皮。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 108,032 字 · 216 页
「それで、丈ちゃんは一体何処にいるの?」
「そいつがわからないんですがね、しかし、兄貴はしっかりしていますよ、唯、いよいよとなったときの用意だけは今のうちにしておかないと」
幻想の消えつくしたあとのげっそりとした疲れが多吉の顔にうかんでいる。伍一はそのままひとりで書斎へ入ったが、しかし不安は叛乱軍よりもむしろ丈吉と自分との関係の中にどっしり根をおろしているように思われる。そのかんじはあくる日になると一層つよくなってきたのである。夕方になって次々と配達される号外には短い報道の中にもいよいよ叛乱軍の最後の運命のちかづいたということを暗示するような暗い翳がちらついていた。伍一は書斎の窓をあけて遠い街々の屋根にまだかすかに残っている雪のあとがキラキラと輝くのを眺め、この数日間不安に湧き立った青春がふたたび元の位置にひきもどされて小さい生活の中に萎れてゆくのをまざまざと見せつけられるような哀感に襲われた。そこへ、格子戸が勢いよくあいて早退けで社からかえってきた内狩の声が聞え、彼はあがってくるとすぐポケットの中から謄写版で刷った一枚の紙きれをとりだした。
「これを今日飛行機で陣地の上から配ったんだよ、――もう駄目だね、こうなったら」