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やまのかみさつじん

山の神殺人

坂口 安吾

「講談倶楽部 第五巻第一〇号」1953(昭和28)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,014 字 · 21 页

青空文庫

平作がドシャ降りの中を疲れきってわが家へ戻ると、わが家の土間では大騒動がもちあがっている。土間にお加久と兵頭ががんばっていて、入れろ入れないで女房お常と争っているのである。

お常は平作を見るより駈けよって、

「どうしたのさ。いつまでも、どこをうろついてきたのさ」

「不二男の姿をさがしていたのだが」

「不二男ならとっくに戻ってきて、ねちまったよ」

「そうか。一足先に帰りやがったか」

「この人たちを、どうするツモリなんだよう。不二男についてる死霊とかメス狐とかを落すんだって? お前さんが頼んだッてのは本当なのかね」

「イヤ、一度はたのんだが、あとで断わったのだ。しかし、まア、このドシャ降りに突き放すのも気の毒だから、今夜だけは馬小屋へ泊めてやろう。お前ら、表へでろ。ウチへ上りこもうなんて、ふとい奴らだ。お情けに今夜だけは馬小屋へ泊めてやるから、ワラをかぶって寝てろ」

平作はお加久と兵頭を馬小屋へ連れこんだ。

もともと平作がなぜお加久をわが家へ連れこむ気持になったかというと、不二男の性根を直そうという考えじゃなくて、甚兵衛のウチで起った事件にヒントを得たせいなのである。