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とうげにかんするに、さんのこうさつ
峠に関する二、三の考察
柳田 国男
「太陽」1910(明治43)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,027 字 · 10 页
見下す村里はかえって右左よく似ておっても、一方の平地が他の一方より高いとか一方の山側は急傾斜で他の一方は緩であるとかいうことが著しく眼につく。これは火山国だから殊にそうなのであろう。それのみならず人の仕業の裏表というものが、大抵の峠にはある。麓から頂上までの路は色々と曲折しておっても、結局これを甲乙の二種に分類することが出来る。一言にしていえば、甲種は水の音の近い山道、乙種は水の音の遠い山路である。前者は頂上に近くなって急に険しくなる路、後者は麓に近い部分が独り険しい路である。一は低く道をつけて力めて川筋を離れまいとする故に、何度も谷水を渡らねばならぬ。他の一はこの煩いはないがその代り見下せば千仞の云々と形容すべき、桟道または岨路を行かねばならぬ。峠に由っては甲種と甲種、または乙種と乙種とを結び付けたのもある。殊に新道に至っては前にもいう通り、乙種のものが多いけれども、古くからの峠ならば一方は甲種他方は乙種である。これを自分は峠の裏表というのである。表口というのは登りに開いた路で、裏口というのは降りに開いた乙種の路である。初めて山越えを企てる者は、眼界の展開すべき相応の高さに達するまでは、川筋に離れては路に迷うが故に、出来るだけその岸を行くわけであるが、いざこれから下りとなれば、麓の平地に目標を付けておい