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しまもり
島守
中 勘助
「犬 附島守」岩波書店、1924(大正13)年5月10日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,146 字 · 37 页
暮れてきたので実をとりあげて燈明に火をともす。心づよくもひとりこの島にすみながら妙高、黒姫、飯綱の山やまをつつむ恐しい雲のかなたに秋の日のうすれて落ちてゆくのをみればさすがにわりない里恋しさをおぼえる。
三十日
餅にもあきて飯をたく。うまくできたので浪華漬をだす。型のごとくがんじょうな桶の蓋には青肉で浪華漬とおした紙をはり、朱印のにじんでるのもいい。天王寺、六万体町、六万堂も気に入った。小刀で目ばりの紺紙を切ってすこし蓋をこじあける。と、ぷんと粕の匂いがする。そうっと粕をはいでみる。下のほうにすばらしい瓜の奴がうまそうに色づいて隠れている。奥にはまだなにかいる様子だったが楽しみにしてわざと見ずに瓜をだす。蓋のうえですこし切って茶漬の菜にし、残りは大切に埋めておく。
夕。鳥居から帰ったら褐色のてんとう虫が机のうえをはっていた。
夜。雨。島のまわりを一本足のものが跳んであるく音がする。なに鳥か闇のなかをひゅうひゅう飛びまわる。雨の音はなにがなしものなつかしい、恋人の霊のすぎゆく衣ずれの音のように。
十月一日
明けがたまでふったとみえ土も落葉もしっとりぬれて、雲はそのままに残りながら雨はあがっていた。