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じゅんさじしょく
巡査辞職
夢野 久作
「新青年」1935(昭和10)年11~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,907 字 · 63 页
とうとう恐ろしい殺意を決するに到った。
オナリ婆さんは老人に有り勝ちな一種の脅迫観念に囚われていたらしかった。オナリ婆さんは村中の人々が自分達の因業さを怨み抜いている事を、知り過ぎる位知っていて、夜になると必要以上に戸締りを厳重にして、一歩も外へ出ないようにしていた。その態度は明らかに村中の人々を自分の敵に廻している気持をあらわしていたもので、しかもその村人の中でも若い、元気な一知が自分の家の中に寝ているのを、さながらに敵のまわし者が入り込んで来ているかのように恐れて警戒していたのであった。
もちろんオナリ婆さんは最初から一知に対してソンナ気持を持っていた訳ではなかったが、その中に一知の鳴すラジオの音が、次第次第に高まって行く中に、オナリ婆さんのそうした恐怖的な妄想もだんだんと大きく深刻になって来て、しまいには一知が自分達を殺す目的でラジオを担ぎ込んだものに違いないとさえ思うようになった。
「なあ爺さん。あのラジオの音の恐ろしい事なあ。あの音のガンガン鳴り続けいる中なら、妾たちがドンナに無残い殺されようをしても村の人には聞えやせんでなあ。一知は村の者から頼まれて、私たちを殺しに来た奴かも知れんと思うがなあ。