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こうじょうしんぶん

工場新聞

徳永 直

「新潮」1932(昭和7)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,771 字 · 16 页

青空文庫

だから、『赤テロ』だ」

おせいは、拳をつくってみせた。タツもうなずいた。組長たちは、ちかごろ『赤煉瓦』で、いろんなことを素ッぱ抜かれるので、眼の敵にしていた。

おせいがコッソリ、コッソリ仲間を募って歩いていた。タツは、しかし、おせいちゃんだって、あんな風になったんだからと思わずにいられなかった。

三時のベルが鳴ると、おせいもタツも顔や手を洗わずに、コンクリの廊下へウロウロしていた。トシちゃんが駈けて来た。

「来たよ、来たよ、フクが……」

真ッ白な作業服のスソをヒラつかせながら、鼻筋を真ッ白に塗った組長が、いそぎ足で来た。いつものように、『職員休憩室』へ、課長や工長共の御機嫌とりにゆくとこだ。

洗面所のワキを二十間ばかりすぎたとこで、一列横隊に、腕を組んだトシちゃんたちが十人ばかりで、いきなりブッつかろうとした。

服部フクは面喰って棒立になっていたが、その間に、おせいや、タツたちが、うしろをとりまいてしまった。

「何を、何をするんですッ」

最初はおどろきで、口も利けずにいたが、フクが黄色い声で叫び出した。

「何もクソもあるかッ」

おせいがいきなり作業帽の上から頭髪をつかんでひっぱった。