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こうじょうしんぶん

工場新聞

徳永 直

「新潮」1932(昭和7)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,771 字 · 16 页

青空文庫

あの日以来、組長どもが急に大人しくなったのが目立ってわかった。

「しかし、要心しなきァいかん、課長も『赤煉瓦』に気がついたらしく、ボクに、一枚でいいから早くめっけてくれと云いやがったよ」そう云って松本が笑い出した。

「よかったね、松本さんにたのみゃァ、手に入るかもしんないよ」

タツがこの際『組長公選運動』を、ドシドシやろうと云った。局の制度は、軍隊式に、各課長の下に、次席、工長、書記、組長、工手、工手補、試傭のいくつにも分かれていた。『組長公選』はこの專制搾取方法をブッこわす一番いい方法だった。

「どうしたの、太田さん?」

いま慌てて入って来た太田の顔色が変ってるので、みんなが振りかえった。

「栗原さんがやられたんだって!」

みんな黙ってしまった。

「何処で」

「局の西通用門で、『赤煉瓦』を流しこんでいてさ、今日昼間、やっと地区の人と、連絡がとれてわかったのよ」

太田はまだ顔色が青かった。

「こうなれば、度胸据えてやるさ」

トリが云った。誰もかれも、検挙の手がみんなに延びると思わずにいられなかった。

「じゃ、抜かれても、ちゃんとアトが残るように……」

悲壮な覚悟で、分会は終った。