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こうじょうしんぶん
工場新聞
徳永 直
「新潮」1932(昭和7)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,771 字 · 16 页
松本がいうと、葉撰部のお下げにしたまだ子供子供した一人が、早口で喋べった。
「妾たち「人生案内」なんて見なかったからわかんないわ、それにこの批評はむずかしくて……」
松本は頭をかきながら、タツ達の方を向くと、トリが――あたしも……と云って、丸いふくれた頬っぺたを真ッ赤にした。
タツは、案外チグ、ハグな、失望した気持だった。様子からして、事務員の太田という女と松本と二人でやってるらしいこの文学雑誌中心の会が、何となくピッタリしなかった。
「や、おそくなりました」
梯子段を、足音をぬすむようにして、青年が一人上ってきた。眼と口とがキワだって大きい。少し反歯の男だった。
「ぼく、栗原というんです、よろしく」
松本の横に坐ってニコニコした。そしてすぐ胡座をかきながら、
「そこの縁日店をのぞいてたらおそくなっちゃった、もう『金魚』を売ってんだね」
この青年が入ってきたら、いやに『秘密くさい』室ン中の空気が、急に明るくなってきたようだった。
「ボクは、専売局で働いたことはないけど、郷里は百姓で『煙草』をつくってるんです、どうぞ仲間へ入れて下さい」
自己紹介に、そんな余計なことまで云って笑わせた。