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こうじょうしんぶん
工場新聞
徳永 直
「新潮」1932(昭和7)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,771 字 · 16 页
一寸みたところ、学生風だが、労働者らしいザックバランなとこがあると、タツは思った。
松本や太田とは旧い友達のように、栗原は遠慮なく喋べった。
「昨夜、『赤煉瓦』を読んだが、こいつは少し感心しないね、ねぇみっちゃんどう思う?」
みっちゃんと云われたお下げの女は、ニッと白い歯をみせて笑った。
「文学にしてもプロレタリアが研究するのは、こんな形式からじゃない」
と、むずかしいことを云った、がすぐ栗原は云い直した。
「もッとさ、みんなにわかるような……」
「そう、そう」
お下げがうなずいた。松本も、太田もだまっていた。
「こんどは不平ランをつくろうじゃないか。たとえば、タンツボ掃除を工女にやらせるな、とか、食堂出入りの『お総菜屋』は値がたかいとか、どこの組長は横暴だとか、どこの課長は誰々さんにヒドいことしただとか……」
タツはびっくりした。この男は、なンて局内のことに明るいんだろうと思った。
「それから、局内じゃ、スポーツは、一工場から一人か二人だけ選抜されて、他の人達は指をくわえてなければならないだろう、あんなのも反対して、みんながスポーツ道具をつかっていいようにしろ、なンていいじゃないかなァ」