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ていてんをみざるのき
帝展を見ざるの記
寺田 寅彦
「中央美術」1920(大正9)年11月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,664 字 · 16 页
が見つかる。そしてなるほどと感心すると同時にあらゆる美しい夢は消えてしまう。何だか批評者がそれを見付けて、そして簡単な誰にも分る概念的な言葉で讃美するに恰好なような趣向や設計がありあり眼につく。それを見付けた時には丁度絵捜しをさがしあてたような理知的の満足は得られても、それから後は却ってその点ばかりが眼について仕方がない。これが暗礁になって私の美しい幻の船は難破してしまう。
私は作家が自覚してこのような絵をこしらえるとは思わない。しかし私の望むところは、そういう安直な見どころをむしろ故意になくするように勉めるくらいにしてもらいたいと思うのである。元来簡単な「言葉」で云い表わす事の出来ないある物を表わすための「美術」ではあるまいか。賞めたくて堪らないが賞め場所の見付からない絵は出来得ないものだろうか。
反対にけなしたくてもどこと云ってけなす点の見付からないほどつまらないと思う絵もないではない。例えば毎年必ず二つ三つはある、同じ樹の葉を百枚もかいたのや、同じ顔の人物を十人も並べたというだけのものである。そういう絵に限って大概価値と反比例に大きな壁面を占有していると思う事もあった。