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ゆうれい

幽霊

江戸川 乱歩

「新青年」博文館、1925(大正14)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,972 字 · 24 页

青空文庫

といって、まさか徒歩であとをつける訳にも行くまい。どう考えて見ても、やっぱりこれは怨霊の祟と思う他はなかった。

「それとも俺の気の迷いかしら」

だが、仮令気の迷いであっても、恐しさに変りはなかった。彼ははてしもなく思い惑った。

ところが、そうして色々と頭を悩ましている内に、ふと一つの妙案が浮んで来た。

「これならもう確なもんだ。何故早くそこへ気がつかなかったのだろう」

平田氏はいそいそと書斎へ這入って行って、筆をとると、辻堂の郷里の役場へあてて、彼の息子の名前で、戸籍謄本下附願を書いた。若し戸籍謄本の表に辻堂が生きて残っている様だったら、もう占めたものだ。どうかそうあって呉れる様にと平田氏は祈った。

数日たつと、役場から戸籍謄本が届いた。併し平田氏のがっかりしたことには、そこには、辻堂の名前の上に十文字に朱線が引かれて、上欄には死亡の年月日時間と届書を受附けた日附とが明瞭に記入されていた。最早や疑う余地はないのだ。

「近頃どうかなすったのではありませんか。お身体の工合でも悪いんじゃないんですか」

平田氏に逢うと誰もが心配そうな顔をしてこんなことを云った。