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おうまじるしはいしゃく
御馬印拝借
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館、1944(昭和19)年2月号
N1 · 挑战 · 新字新假名 · 21,483 字 · 43 页
書状に添えて牡丹の鏡が戻されて来た、……勘兵衛は手紙を読み終ると、むすめを招いて「これを読んでみろ」とわたした、信夫にはそれが誰の書状であるかすぐにわかり、ちょっと顔を蒼くしながら、しかしおちついた態度で披いた。……心いそぎ候まま委細つくし申さずそろ。このたび出陣のみぎり、御秘蔵の古鏡、御恵与にあずかり候こと身にあまる果報と存じそろ。さりながら拙者にはお受け申すこと相成り難く、ぶしつけの儀いかにも申しわけこれなく候えども、ぜひぜひ河津虎之助にこそ古鏡お譲り下されたく存じそろ、虎之助ことは無双のもののふにて、拙者には片腕とも弟ともたのむ者にござそろ、信夫どのにも……よくよくこの儀お伝えのうえ、やがて華燭のおん祝もあらば、貞節なる妻としてすえながくお仕えなさるべく、万福の栄えをこそ、お祈り申上げそろ。源七郎という署名の力づよい文字を見ながら、信夫はあふれてくる泪を抑えることができなかった、源七郎のひろく温かい心がかなしいほどじかに胸をうつ、自分が迂濶だったために犯したとり返しようのない過ちを庇って、虎之助に鏡を譲って呉れとみずから父に頼んで呉れた、貞節な妻になれというひと言は、おそらく信夫に呼びかけている