轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

びしょう

微笑

豊島 与志雄

「雄弁」1919(大正8)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,995 字 · 43 页

青空文庫

」そう云いすてて私は電車に乗った。

電車の中では何にも云わないことにしていた。その上、女は向うの方に腰掛けてしまった。ただ時々私達の方を見ていた。

けれどもそれだけの結果でも私には非常な成功だった。私は嬉しくなった。

「なる程女の方が男よりは進歩してますね。」と村瀬は結論した。「これから女の方を狙うとしましょうか。」

そして私達はその「狙う」という言葉に笑い出した。

結果は予期に反した。女の方が男よりも一層不愛想なことが多かった。

或る時私は、一人の若い女に話しかけた。すると彼女はちらと私の顔を見たが、そのまま黙って向うへ行った。其処には五十位の老人が立っていた。女は彼に何か囁いた。と老人は一度頭を強く横に振って私の方をじっと見つめた。太いステッキを持った老紳士だった。眉根を寄せた鋭い眼の光りを私は見た。「しまった」と私は思った。何か罪を犯したような気が一寸した。

けれども私達の心はもう非常に落付いていた。そして愉快になっていた。強い好奇心も働いていた。ただそのために以後二人連れの者には決して話しかけぬことにした。

「人間の心が一番よくうち開くのは、ただ一人で居る時に限る」