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しんりしけん

心理試験

江戸川 乱歩

「新青年」博文館、1925(大正14)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,728 字 · 46 页

青空文庫

彼は思切って、静かに格子戸を開けた。そして、何気なく、今暇をつげたお客様だという様な顔をして、往来へ出た。案の定そこには人影もなかった。

その一劃はどの通りも淋しい屋敷町だった。老婆の家から四五町隔った所に、何かの社の古い石垣が、往来に面してずっと続いていた。蕗屋は、誰も見ていないのを確めた上、そこの石垣の隙間から兇器のジャックナイフと血のついた手袋とを落し込んだ。そして、いつも散歩の時には立寄ることにしていた、附近の小さい公園を目ざしてブラブラと歩いて行った。彼は公園のベンチに腰をかけ、子供達がブランコに乗って遊んでいるのを、如何にも長閑な顔をして眺めながら、長い時間を過した。

帰りがけに、彼は警察署へ立寄った。そして、

「今し方、この財布を拾ったのです。大分沢山入っている様ですから、お届けします」

と云い乍ら、例の財布をさし出した。彼は巡査の質問に答えて、拾った場所と時間と(勿論それは可能性のある出鱈目なのだ)自分の住所姓名と(これはほんとうの)を答えた。そして、印刷した紙に彼の姓名や金額などを書き入れた受取証見たいなものを貰った。なる程、これは非常に迂遠な方法には相違ない。