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あやしのやかた
怪しの館 短編
国枝 史郎
国枝史郎『怪しの館 短編』。同一底本的分册已合并为一书。收入:怪しの館、一枚絵の女、犬神娘、開運の鼓、猿ヶ京片耳伝説、日置流系図、北斎と幽霊。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 81,915 字 · 165 页
「結構なことで、フン!」
「結構でないのは若党――お侍さんで、ガラリと性質が変わりましたそうで」
「変わりましょうなア」
「それからは女という女を憎むようになったそうです」
「あっしだって憎みますよ」
と、口を出したのは、八木原宿の葉茶屋の亭主だという、四十がらみの男であった。
「あっしばかりじゃアない、誰だって憎むでしょうよ。……ねえご主人、そうじゃアありませんか」
こう云うと葉茶屋の亭主だという男は、桔梗屋の主人の方へ顔を向けた。
桔梗屋の主人の佐五衛門は、持っていた筆を、ヒョイと耳へ※(「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2-13-28)んだが、帳場格子へ、うっかり額を打ち付けそうに頷き、
「ごもっともさまで、女出入りで、そんな酷い目にあわされましたら、誰だって女を憎むようになりますとも」
「若党っていう男に、同情だってするでしょうねえ」
とまた口を出したのは、左官の親方だという触れ込みの、三十四、五の男であった。
「さようですとも、その気の毒な若党殿には、私ばかりか、誰だって同情するでございましょうよ」
と、佐五衛門はまた頷いてみせた。
「ところで、その若党――お侍さんが、どんな塩梅に女を憎んだかってこと、お話ししましょうかね」