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あやしのやかた

怪しの館 短編

国枝 史郎

国枝史郎『怪しの館 短編』。同一底本的分册已合并为一书。收入:怪しの館、一枚絵の女、犬神娘、開運の鼓、猿ヶ京片耳伝説、日置流系図、北斎と幽霊。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 81,915 字 · 165 页

青空文庫

「あっ」

わたしも驚きましたが、捕吏たちもすっかり胆をつぶし、叫んだり喚いたり詈ったり、座敷から庭へ飛び下りたりしました。

突然笑い声が爆発しました。

右門様が抜き身を頭上で振りまわし、躍り上がりながら笑ったのでした。

「ワッハッハッ、思い知ったか!」

「だから拙者申したのじゃ」と、右門様の笑い声に引きつづき、総髪の大髻に髪を結い、黒の紋附きに白縞袴を穿いた、わたしの見知らないお侍様が凛々しい重みのある澄んだ声で、そう捕吏たちに云いました。

「人違いじゃ、粗相するなと。……平野次郎国臣は嘘言は云わぬよ。……月照上人など当庵にはおられぬ。……これなるお方は野村望東尼殿じゃ。……福岡において誰知らぬ者とてはない、女侠にして拙僧の野村望東尼殿じゃ。……和歌の会催そうそのために、望東尼殿も拙者も参会したものを、月照上人召し捕るなどと申して、この狼藉は何事じゃ」

内外森然としてしまいました。

おおおおそれにしても何んということなのでしょう、ご上人様と思っていたそのお方は、さっき方怪しい屋敷の前で、わたしが物を訊ねましたところの、尊げな尼僧様でありましたとは。

八