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かいとうおう

怪塔王

海野 十三

「東日本小学生新聞」東京日日新聞社、1938(昭和13)年4月8日~12月4日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 167,635 字 · 337 页

青空文庫

ちょうどそのとき、塔の向こうから、車の轍の音がごとごと聞えてきました。

そのうちに塔の前に姿をあらわしたのは、大きな木箱を積んだ馬車でありました。馭者は台の上にのっていましたが、酒にでも酔っているらしく、妙な声ではな唄をうたっていました。車をひっぱる痩馬は、この酔払い馭者に迷惑そうに、とぼとぼとついていきます。

「こーら、老いぼれ馬め、もっとさっさと歩くんだ。俺さまの手にある鞭の強いことを、手前は知らないな」

ぴしりと鞭は、空中に鳴りました。

痩馬は、痛さにたえかねたらしく、ひひんと嘶いて急に駈けだしました。そのとき、車の上から、積んでいた木箱がつづいて二つ、がたんと地上に転げおちました。それは馬車が急に走りだしたせいでありましょう。

木箱二つが、砂の上に転がりおちたことを馭者は知らないようでありました。彼はなにかわけのわからぬことをわめきながら、かわいそうな痩馬に、ぴしぴしと鞭を加えて走らせていきます。そしてそのまま闇の中に見えなくなってしまいました。

砂上にのこされた木箱二つ。いつ誰が拾いにきてくれますやら。

この木箱の落ちたところは、ちょうど例の怪塔の扉の前でありました。