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かいとうおう

怪塔王

海野 十三

「東日本小学生新聞」東京日日新聞社、1938(昭和13)年4月8日~12月4日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 167,635 字 · 337 页

青空文庫

3

甲板の上へ出ると、なにかたいへんなことがあるというしらせです。塩田大尉は小浜兵曹長をひきつれて、すぐさま昇降口をかけあがりました。

軍艦淡路の甲板の上からは、いつに変らぬ九十九里浜の長い汀がうつくしく見えていました。

だが、塩田大尉の目には、べつにたいへんらしいこともうつりませんでした。

「小浜兵曹長、たいへんとは一体何がたいへんなのか」

すると兵曹長は、大尉の前へ腕をのばして海岸の方をゆびさしました。

「塩田大尉、あれをごらんください。あそこにたっていた塔が、どこかへ姿を消してしまったではありませんか」

「なに、塔が姿を消したって。誰がそんなばかばかしいことを本当にするものか」

「いや、そのばかばかしいことが本当に起ったのです。では塩田大尉には、あの塔が見えるのでありますか」

「見えないはずはない、あの塔は、あの辺にたしかにあったと思ったが――」

と、塩田大尉は甲板の上から、小手をかざし、かねて覚えのある場所をしきりにきょろきょろと眺めましたが、どうしても塔が見えません。

(変だな、たしかあの林のそばに建っていたと思うが、見えないとはどういうわけだ)