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きょうふのくちぶえ
恐怖の口笛
海野 十三
「富士」1934(昭和9)年8月号~11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 60,713 字 · 122 页
覆面探偵の帰還!
その気配を知って、奥から飛ぶように出て来たのは勇敢な少年探偵勇だった。
「ああ。青竜王。――僕は今日きっと青竜王が帰って来ると思ったんです」
といって、相も変らず頭部にはピッタリ合った黒い頭巾を被り、眼から下を三角帛で隠した覆面探偵を迎えたのだった。探偵は少年の肩を両手で優しく叩いた。
「昨夜は青竜王、素敵でしたネ。だけど、もう僕たちを呼んで下さるかと思っていたのに、ちっとも呼んで下さらないので、ガッカリしちゃった」
「勇君も大辻も来ていたのは知っていたが、昨夜の事件は危くて、手伝わせたくなかったのだよ」
「その代り僕は、いろいろな土産話を青竜王にあげるつもりですよ。昨夜舞台下で殺された男ネ、あれは竜宮劇場に毎日のように通っていた小室静也という伊達男ですよ。いつも舞台に一番近いところにいて、ジュリアが出ると誰よりも先にパチパチ拍手を送るイヤナ奴ですよ。あの男のことは、竜宮劇場のファンなら誰でも知っていますよ」
「ああ、そうだったのか。それはいいことを聞いた」
「あの伊達男小室の咽喉にあった凄い切傷も、この前、日比谷公園で殺された学生の咽喉の傷も、どっちも同じことですね。