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おんし

恩師

佐々木 邦

「現代」1926(大正15)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,714 字 · 14 页

青空文庫

「出来ないのかい?」

「いや、素敵に出来る。しかし校長と仲が悪かったんだね。そこへ僕達が問題を起したものだから首になったのさ」

「それでこの会社へ入ったのかい?」

「さあ。その後のことは一向聞かないが、或はこゝにいるのかも知れない」

と私は気にも留めなかった。

控室の向いが会見室だった。時刻きっかりに給仕が現れて、

「土屋滋さん!」

と呼んだ。皆急に緊張した。数えて見たら二十三人いた。土屋君は組が違うから成績のほどは分らないが、物の五分とたゝない中に会見室から出て来た。二番目が呼び込まれた。C組の連中は土屋君を取り巻いて、

「何うだい?」

と様子を尋ねた。

「豪い目に会った。英語でやるぜ。面食ったよ」

と土屋君は溜息をついた。

「何を訊いたい?」

「それが分るくらいならこんなに早く出て来やしねえ」

「ハッハヽヽ、ハヽヽヽヽ」

と皆覚えず笑ってしまった。

「もう宜いから帰れと言ったぜ。それ丈け分ったから、グッドバイと言ってお辞儀をしたら笑っていたぜ。迚も迚も」

と土屋君は尻尾を巻いて逃げて行った。

二番目は大分手間を取った。

「輸入超過と貿易差額の関係を訊かれたよ」

と元気の好いところを見ると巧くやって来たのらしかった。