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おんし
恩師
佐々木 邦
「現代」1926(大正15)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,714 字 · 14 页
お母さんも異存がない。こゝまで話した時、私は浜口君にどやしつけられた。しかし事実は事実で仕方がない。清子さんは去年女学校を卒業して此年十九、私は二十五だから、お母さんの説によると、何方も厄年だそうだ。
「真実に気をつけて下さいよ」
と時々仰有るのは間違のないようにという意味だろう。
「間違は未だない。熱心に相愛しているけれど、その点は大丈夫だ」
と保証したら、浜口君は、
「好い加減にしろ!」
と言って私を突き飛ばした。
さて、私が、
「清子さん、明後日イヨ/\見合に行きますよ」
と冗談まじりに切り出した時、
「まあ、到頭御決心なすって?」
と清子さんは直ぐに就職の会見と正解してくれた。実に頭が好い。
「しかし神戸ですよ」
と私はこれを言うのが辛かった。
「神戸? あなた神戸へいらっしゃるお積り?」
「行きたくもありませんが、思うようには参りませんからね」
「東京にはないんでしょうか?」
「ないこともないですが……」
「私、随分御勉強のお邪魔を致しましたからね」
と清子さんは成績の都合と察してくれた。斯う覚りが速くては夫婦になってから困る場合が多かろうと思われる。
「然う悪い成績でもない積りですが、ひどい競争をするのが厭やです。