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あくまのでし

悪魔の弟子

浜尾 四郎

「新青年」1929(昭和4)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,202 字 · 51 页

青空文庫

カルモチンで自殺が出来るなどというのが、自分には滑稽に聞える位です。

あれも駄目、之もだめ、という結果、二年ばかり前に私はある有名な医者の所を訪れたのでした。其の人は私に対してある粉末の催眠剤を処方してくれました。ところが其の専門家の説によれば、患者が薬の内容を知っているという事は既に、斯の如き(不眠症の如き)場合には、非常にきき目が薄くなるものである、という理由からして内容を絶対に私に知らせずに、特に近所の薬剤師に与えてくれたものだったのです。

ただ一寸聞いた所によれば、云わば催眠薬のカクテールのようなもので、種々な薬が調合されてあるらしいのです。そこで私ははじめの中は、その薬局から忠実に三日分ずつを貰って之を用いていたわけなのです。

しかし、不眠症にかけては先輩であるあなたは、恐らく薬局と患者との関係がこのままではすまない事を推察なさるでしょう。

半年ばかり経つうちに一日の量はようやく効力を薄めて来ました。私は焦慮しました。ためしに二日分一度にのんで見ました。非常にいい結果です。しかし一日早く薬局にとりに行く口実を何と申したらよいでしょう。

斯ういう患者が得てして用いる手です。