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あくまのでし

悪魔の弟子

浜尾 四郎

「新青年」1929(昭和4)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,202 字 · 51 页

青空文庫

土田さん、あなたも益々量を増しているそうですね。行く先どうなるか、流石賢明なあなたも考えられないと見えます。

斯の如くにして、私がこのごろ用いている薬の量は、二年前に医者に与えられた一日分の殆んど十倍にも当っているのです。私が二年前に処方された一日分の催眠薬の量が、既に常人の用いる数倍の強さです。その十倍です。之がかよわい、妊娠した女にどんな効果を与えるでしょう。

私はそこを考えました。

若し露子に呑ませて殺し得ないにしても、恐らく致命的な現象を惹起するに違いない。そして呑ませる方法は至極簡単です。薬に恐らく知識のない露子は、彼女の面前で私が自身或る量を呑んで見せれば、無論安心して自分も呑むに違いない。これは極めて自然の方法でわけのないことです。

そうして若し、嘔吐か何かして目的を達しないでも、私自身がそれだけ呑んでおり、その時も呑んで見せるのですから、彼女に些かなりとも疑をおこされる憂はないわけです。即ち万一失敗した場合に於ても、危険はないのです。そうして首尾よく目的を達した時には、彼女が誤って多量に呑んだという推察しか下せないのです。仮令、私が、すえ子という情婦をもち、妻を殺しそうな情況にあるとしても、私が妻に故意に呑ませたという証拠を誰が挙げることが出来るでしょう。