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わがやのらくえん
我が家の楽園
久生 十蘭
「オール読物」1953(昭和28)年1月〜6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 90,195 字 · 175 页
「申し訳ありませんが、まァ、そういうこッてす。それで、つかぬことを伺うようですが、あんなところへ豚をしめこんで、いったい、どうするつもりだったんです? 私の見たところでは、あの豚は、十日ぐらい、なにも食っちゃいないですよ」
「どうするという質問には、お答えができない。豚を飼ったこともなければ、飼おうと思ったこともないから」
「たしかな話でしょうな」
「たしかだろうとも。当人がそういっているんだから」
係長は、底意ある眼つきで石田氏の横顔をながめていたが、手ぬるいことでは駄目だと思ったのか、調子を変えて、ネチネチと絡みだした。
「崖端の垣根のところに、豚の毛がたくさん落ちているし、庭の隅に、豚を焼いたらしい石のカマドのようなものもある。ここで豚を飼って、密殺して食べていられたのとちがいますか」
「君もしつっこい男だね。なんのために、そうまでして、俺に豚を飼わせたいんだ?」
「失火の原因はつきとめたが、どこの豚だかわからないじゃ、事件のしめくくりがつきやしません。正直にいってくだされば、密殺のほうは、大目にみてあげます」
「そういうことなら、この事件は、永久にしめくくりがつかないだろうよ。