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わがやのらくえん
我が家の楽園
久生 十蘭
「オール読物」1953(昭和28)年1月〜6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 90,195 字 · 175 页
四
「それから、これを、こう脱ぎまして……つぎに、これを、こう脱ぎまして……」
調子をつけて、上着を脱ぎ、スカートを脱ぎ、靴下を脱ぎ、下着をとって、最後に、とうとう裸になってしまった。
女のひとは、しなしなと身体を揺すって、
「どう? おわかりになったでしょう? おわかりになったわね」
といいながら、石田氏のほうへ詰め寄って行った。
石田氏は、両手を前へ突きだして防ぎながら、じりじりと壁のほうへ退った。
「おれでは駄目だ。賢夫人を呼んで来い」
賢夫人と千々子さまが、女のひとをおさえつけて、もとのように服を着せ終ったところへ、警官が出張してきた。百々子は下の門まで送って行った。
門を出るとき、そのひとは百々子の腕に手をかけて、
「あなた、ご親切ね。また来るわ」
と低い声でささやいた。
四
桃色の壁付灯のついた、むかしの長持部屋へ行くと、硝子扉に寄ったところに食卓が出来て、石田家の三人が椅子に掛けていた。
差当って、食卓の代用をしているのは、今朝まで家裏の湿地に放りだしてあったアメリカ製のピンポン台だが、脚の高いテーブルに、座位の低い古ソファを配置したので、石田氏も、賢夫人も、千々子さまも、みな深く沈みこんで、食卓のうえに眼だけ出していた。