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わがやのらくえん
我が家の楽園
久生 十蘭
「オール読物」1953(昭和28)年1月〜6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 90,195 字 · 175 页
さえあれば、部屋へ駆けこんで、ころころしながら赤ん坊とふざけている。
七月末のある朝、五十雄君が百々子の部屋をノックして、
「来たらしいよ」
と下の門のほうを、顎でしゃくってみせた。
玄関へ出てみると、門から車寄せにうねりあがっている砂利道を、白塗りのジープが、ためらうようにそろそろとのぼってくるのが見えた。
「むかしは白い馬、いまは白いジープ……千々子さまの夢は、ぴったりと的中した。これゃ、本物だよ」
車寄せの縁石のところで車をとめると、二十四五ぐらいにもみえる海軍士官が降りてきて、この家は石田というのかときくから、そうですといってやった。
シュラー・ハークネスが、こんなに若いひとだと考えたこともなかったが、また、こんなにすごい美青年だと思ってみたこともなかった。すらりとした長身で、ぬけるように肌が白く、上気して、頬が巴旦杏の色に赧らんでいる。真鍮色の眉の下に、液体の中で泳いでいるかと思うような、睫毛の長い淡色の美しい眼がある。
シュラー氏は民間人だというから、もちろん旅客機で来るのだと思っていたが、海軍だというなら、話がちがう。アメリカの軍艦は、このごろよく、台湾海峽でネバリついて、動かなくなることがあるそうだから、遅れるのも当然だと思って同情した。