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わがやのらくえん
我が家の楽園
久生 十蘭
「オール読物」1953(昭和28)年1月〜6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 90,195 字 · 175 页
「はあ、ずうっと、ここの現場をやっています……ちょっと清水さんに」
「清水さんなら、あそこにいるわ」
大里君が広縁へ行くと、ヘンリ清水が、なんだといいながら、こちらへ振返った。
「西側の隅棟の屋根が抜けそうです。放っておくと、階下のサロンへ落ちます」
ヘンリ清水は、髪をかきむしりながら、呻いた。
「ちくしょう、あそこも抜けるのか……だが、そうばかりしていると、全部、やりかえるほかなくなる……いま行くから、むこうで待っていてくれ」
大里君が現場に帰ると、ヘンリ清水は、石田氏をつかまえて愚痴をこぼしだした。
「陸屋根をおさめると、こんどは隅棟とくる。漆喰だ、天井だ、小屋梁だ、階段だ……大風のあとの修繕だけで、かれこれ十万円もかかりました。ボロは承知だが、それにしても、えらい屋台を背負いこんだもんですよ」
「愚痴をいうことはないさ。かければかけただけのことはあるんだろう? ……奉仕だなんていうが、内実は、この家をハークネスの名義にして、ロッジ式の、モーテルにするんだそうだな。太田の女親分が、そういっていた」
「あいつめ、そんなことまで、しゃべったんですか。いやはや、とんだやつと組んだよ……こうなれば、正直にぶちまけますが、ハークネスは、一週間も前に、東京に来ているんです」