轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

わがやのらくえん

我が家の楽園

久生 十蘭

「オール読物」1953(昭和28)年1月〜6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 90,195 字 · 175 页

青空文庫

しかしそれは、こちらでお払いする分と、相殺勘定になりますから、たいしたことには、なるまいと思います」

「飛んでもない……プールとテニス・コートは、取り壊して、もとの荒地にして返してもらうつもりだから、相殺もくそも、ありはしないのだ」

「おどろきましたな……あれを壊すとなると、取り片附けの費用は、国が負担することになりますが、あんなに立派にできているものを、壊してしまうのですか」

調査班の若いひとは呆気にとられ、スクリプトを抱えて引き退って行くと、待ちかねていたように、石田氏と賢夫人の間に、もんちゃくが起こった。

二人のかけあいの合間に、千々子さまが賢夫人の耳元で、ぼそぼそ囁きながら、なにか、しきりに嗾しかけている。いつにない石田氏の激昂ぶりに恐れをなした千々子さまが、賢夫人を突っついて、プールとテニス・コートを、そっとしておこうというのらしかった。

石田氏としても、むかしどおりの上段ノ間に復原できるとは思っていない。筋のとおらぬ横車を押しとおしたのは、調達局と訴訟でもすることになれば、その間、体面をそこなうことなく、バラックの楽園に居据っていられると思ったからにちがいない。