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わがやのらくえん

我が家の楽園

久生 十蘭

「オール読物」1953(昭和28)年1月〜6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 90,195 字 · 175 页

青空文庫

賢夫人の希望も、あわせてかなえたわけだったが、それが相手に通じないとは、おかしな話なので、石田氏は腹をたてて、床の上に胡坐をかいてしまった。

「こんな大屋台を背負いこんで、税金を払うために、みじめな暮らしをするのはいやだといったのは、お前だったな。いったい、どこが不服なんだ」

賢夫人も、立ち疲れたとみえて、桃尻になって、しゃがみこみながら、

「むかしの、古邸の態しか浮ばなかったので、たしかに、昨夜は、そう申しましたが、今日、見て歩いているうちに、気持が変ったんです……いずれ、千々子を嫁づけなくてはならないのですが、あんなバラックから嫁にやって、終生、みじめな思いをさせるより、こんな家から出してやられたら、千々子にしたって、嬉しくないことはないでしょう……虚栄だとおっしゃるかもしれませんが、嫁にやる娘を持つ母の心は、たいていこうしたものなんです……あなたが無理を押してくだすったので、資産再評価のほうも、未決定のまま、先へのばせるわけですから、庭木のほうで、うんと補償金をとってくだされば、女中ぐらいおいても、やって行けると思うのですが、いかがでしょう」

三