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わがやのらくえん
我が家の楽園
久生 十蘭
「オール読物」1953(昭和28)年1月〜6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 90,195 字 · 175 页
石田氏はグラビヤにチラと視線を走らせると、進退窮したという顔になって、いそいで眼をとじてしまった。
賢夫人は、説いて聞かせるといったねばっこい調子になって、
「去年の十月に、行政整理の枠がきまると、高級官吏試験の落第組に、局部長から辞職の勧告があったのだそうですね。一月中にやめると、普通退職手当の八割増し……四月から六月の間にやめると、四割増し……こういっちゃ、なんですが、あなたの前途はわかりきっているんだから、すすめても、条件のいいうちに退職していただきたかったくらいです……一月の中頃でしたか、西洋の哲人が、どうとかいっているから、おれはもう、よけいな欲はかかないつもりだとおっしゃったとき、ああ、これは退職なすったのだと、ほっとしたのです……ていのいい解職ですから、あなたとしては、いいにくいでしょうし、あたしとしても、あなたの自尊心を傷つけてまであばきだす必要のないことですから、今日まで、欺されたままになっていましたが、春以来、ありもしない役所勤めで、さぞ、忙しい思いをしているのだと、察していました」
これで、完全にトドメを刺されたわけだが、そこは官僚ずれのした石田氏のことだから、含み笑いのひとつもして、軽く体をかわしてしまうのだろうと思っていたら、そうではなく、唇をキッとひき結んで、意外に沈痛な顔に