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わがやのらくえん
我が家の楽園
久生 十蘭
「オール読物」1953(昭和28)年1月〜6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 90,195 字 · 175 页
これじゃ、臭くて入って行けないから」と頼んだ。
戦時中、防空壕の掩蓋になっていた吉良の雑倉の小屋根に風穴があくと、係長と刑事が後先になって地下室へ入って行った。三十分以上もゴソゴソやって出てくると、木骨混凝土の絶縁壁の間を通っている、焼け爛れの電線を手繰りながら、ケチンの焼跡へ行き、灰のなかにしゃがんで、その辺を掘っくりかえしていたが、納得したような顔になって、みなのいるところへ戻ってきた。
係長は石田氏のそばへ行くと、如才のないつくり笑いをしながら、
「ちょっと、お伺いしたいことがあるんですがね」
と軽い調子で誘いかけた。石田氏はそっぽを向いたまま、
「火事の話をすると、口が乾いて困るんだ。洗いざらえ、言い尽したはずだから、いい加減にしてもらいたいね」
と突っ放したが、係長のほうは、なんの感じもないふうで、
「あなたにとっても、有利な話なんですから、つきあってやってください。たいして、お手間はとらせないつもりです」
「警察へ行くのかね」
「お話を伺うだけですから、なんでしたら、あちらの広廊の端ででも」
「だいぶ困っているようだな。君を苛めてみたってしょうがないから、長くなければ、つきあってやってもいい」