轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
あるおんなのしゅき
或る女の手記
豊島 与志雄
「婦人倶楽部」1920(大正9)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,447 字 · 37 页
誰も居なかった。門の外へ出てみた。通りにはお坊さんらしい姿は見えなかった。
然し、私は現に彼の姿を玄関で見たのだった!
私は義姉さんに尋ねられて、初めからのことを、去年からのことを、すっかりうち明けた。話の半ばに兄さんも帰って来られた。義姉さんはその日のことを手短かに話された。私は初めからのことをまたくり返した。兄さんは黙って聞いていられたが、私が話し終るのを待って、こう仰言った。
「それはありそうなことだ。……もっと早くうち明ければいいのに、隠してるからいけないんだ。」
そして結局、兄さんの結論としては、私が神経衰弱になってるか、向うが半狂人になるほどのぼせきってるか、否恐らく両方ともそうだろう、ということだった。私と義姉さんとは、互に顔を見合って、不気味な予感に震え上った。
その晩相談の結果、私は万事兄さんの指図に従うこととなった。第一には、出来る限りお寺の前を通らないこと、もし朝遅くなった時なんか、廻り途をする時間がない場合には、お寺の向うまで女中に送って来て貰うこと、帰りには必ず廻り途をしてくること。次に、もしお坊さんと出逢って変なことがあったら、必ず兄さんにうち明けること、そうすれば此度こそは、兄さんが向うへ行って、厳重に談じ込んで下さること。