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ピッチャーさつじんじけん

投手殺人事件

坂口 安吾

「講談倶楽部 第二巻第五号」1950(昭和25)年4月10日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,243 字 · 57 页

青空文庫

「怪物の名にそむきませんなア。敵ながら、アッパレな奴ッちゃ。これで札束がだいぶ減りおったろう」

木介は札束ばかり気にしている。

「モク介。この契約金、いくらと思う」

「罪なこと考えさせる手はねエですわ」

また十四五分で煙山が現れる。

自動車は一散に京都へ。

「なるほどねえ。ちゃんと諸事片づけて、大鹿の隠れ家へか。敵は順を考えとる。コチトラの追跡、知ってやせんですか」

「そうかも知れん。汽車の中から、ちゃんと見抜きおったかな」

「どうも、いけませんわ。札束のヘリメにしたがって、コチトラの腹がへるらしい。はやくヤケ酒がのみたいな」

車は京都の市街へはいった。車の止ったところは、河原町四条を下って、はいった、裏通りの、小粋な家。しかし、小ッちゃな、料理屋のようなところ。しかし、旅館の看板がぶらさがっている。そこまで送って自動車は戻っていく。二人も車を降りた。

「さては、ここが大鹿の隠れ家かな。よろし、こうなったら、オイラも泊りこんでやれ」

「よか、よか」

二人が旅館の玄関へ立つと、老婆がチョコチョコ出てきて、

「おいでやす」

「お部屋ありますか」

「お部屋どすか。あいにくどすなア。