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ピッチャーさつじんじけん

投手殺人事件

坂口 安吾

「講談倶楽部 第二巻第五号」1950(昭和25)年4月10日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,243 字 · 57 页

青空文庫

満員どすわ」

「今、一人、はいったでしょう」

「ハア、予約してはりましたんや」

「ズッと長く泊ってる人が一人いるでしょう」

「どないなお人どすねん」

「六尺ぐらいの大きい男」

「知りまへんなア」

「今、はいった人の知り合いの若い大男」

「知りまへんなア」

仕方がないから、二人は廻れ右。時計を見ると、九時五十分。

「アッ。ここに、ウドン屋があらア。一杯のんで、きいてみようや」

「それあるかな」

熱カンをつけてもらって、前の旅館に大男が泊っていないかサグリを入れるが要領を得ない。

「オッサン、野球、見ないかね」

「野球やったら、メシよりも好ッきやね」

「チェスターの大鹿投手、知ってるかい」

「スモークピッチャーや。ヒイキしてまんね」

「その大男や。前の旅館に泊っとらんか、そういう人物は」

「見かけまへんなア」知らなければ、長居は無用。

「ままよ。当ってくだけろ。いっそ、煙山に面会を申込もうや。相手が、どう出るか、やぶれかぶれさ」

「がってん」

そこで再び旅館にとって返して、

「さっきの煙山さんに会いたいが」

「ハア。煙山はん、御散歩におでかけどすわ」

「ヤヤ」

木介は奇声を発した。金口はさすがに落着いて、