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しんどうま

振動魔

海野 十三

「新青年」博文館、1931(昭和6)年11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,354 字 · 34 页

青空文庫

呉子さんと僕との心が、いつとは無しに相寄って行ったのは、誰にも肯いて貰えることだろうと思う。

柿丘の死後二ヶ月経った晩秋の或る朝、僕はその日を限って、呉子さんの口から、或る喜ばしい誓約をうけることになっているのを思い浮かべながら、新調の三つ揃いの背広を縁側にもち出し、早くこれに手をとおして、午後といわず、直ちに唯今から、呉子さんを麻布の自邸に訪問しようと考えた。

僕は、帯をほどいて衣服をうしろにかなぐり捨てると、猿股一枚になって、うららかな太陽の光のあたる縁側にとび出し、、ほの温い輻射熱を背中一杯にうけて、ウーンと深い呼吸をして、瞼をとじた。

「町田狂太さん」

不意に、庭の方から人の近づく気配がした。眼を眩しく開くと、三十あまりの若い青年紳士が、こちらを向いてニコヤカに笑いながら、吾が名を呼びかけた。

「僕は町田ですけれど、貴方は、どなたでしたかね」

僕も、ついつい笑いに誘われて、朗かに云ってのけた。

「ちょいとお話を伺いたいことがあるんですが……。僕は、こういう者なんでして」

そう云って青年紳士は、一葉の名刺をさしだした。とりあげて読んでみると、

「私立探偵 帆村荘六」