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そうわ

挿話

徳田 秋声

「中央公論」1925(大正14)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,544 字 · 53 页

青空文庫

お稽古の真似や」

「己もだんだん長くなってしまったね。まだ誰もここにいるとは思っていないようだけれど」

「ちっとどこぞへ遊びにおいでたら」

「そうするとまたここへ訪ねてくるからね。この間も兄にきかれて困った。嫂はたぶん感づいていても知らん顔をしているけれど、嫂の兄さんがばかに律義な人でね、どこだどこだってしきりに聞くんだ」

「そんな秘し隠しをしなくともいいじゃありませんか。別に悪いところにいるというのじゃないし、女を買うわけでもないんですもの。山中なんかへ行ってるよりか、よほど安心なもんや」

「それにもうしばらく兄の容態も見たいと思っているんだ。今日いいかと思うと、明朝はまた変わるといったふうだから、東京へ帰って、また来るようなことになっても困る」

そのころ病人は少し落ち著いたところで、多勢の人たちによって山から降ろされて、自分の家の茶室に臥ていた。兄はしばらくぶりで、汽車の窓から顔を出している道太を見て、さも懐かしそうな目を見張った。

道太はその日も、しばらくそばについていたが、山にいた時からみると、意識はほとんど完全に恢復されていた。

「今どこにいるんだ」