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そうわ

挿話

徳田 秋声

「中央公論」1925(大正14)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,544 字 · 53 页

青空文庫

三

もっともそれを見究めなかったのは、己にもあやふやなところがあるからだ」道太はそう思うと、この事件の全責任が道太に繋っているように言う一部の人たちの言草にも、厳粛にいえば、相当の理由のあることを認めないわけにいかなかった。

道太は温泉へ行こうか、ここに御輿を据えようかと考えていたが、そのうちに辰之助がかけた若い女が来たりして、二階へ上がって、前にも二三度来たことのある奥座敷で、酒を呑んでいた。常磐津のうまい若い子や、腕達者な年増芸者などが、そこに現われた。表二階にも誰か一組客があって、芸者たちの出入りする姿が、簾戸ごしに見られた。お絹もそこへ来て、万事の話がはずんでいた。

道太がやや疲労を感じたころには、静かなこの廓にも太鼓の音などがしていた。

三

離れの二階の寝心地は安らかであった。目がさめると裏の家で越後獅子のお浚いをしているのが、哀愁ふかく耳についた。

「おはよう、おはよう」という人間に似て人間でない声が、隣の方から庭ごしに聞こえてきた。その隣の家で女たちの賑やかな話声や笑声がしきりにしていた。

「おつるさん、おつるさん」こわれた器械からでも出るような、不愉快なその声がしきりにやっていた。